
2025年10月12日にUnreal Engine Meetup in Osaka Vol.04が開催され”インディーゲーム『こふんは生きている』制作事例”というテーマでCAVYHOUSE代表の善乃さんが登壇しました。
30分の登壇の中で自身の作品『こふんは生きている』での制作事例を紹介をしていたところ、1枚のスライドが話題になりました。これは”個人開発でブループリントを使って開発していたところ、機能が増えて予想より複雑になってしまった”という事例として挙げたもので、SNSでも話題になりました。

画像のように、とんでもない数のノードが見られゲーム開発経験がある方は自分のゲームを思い出したり過去のプロジェクトを思い出したり様々な想いが胸の内を去来するのではないでしょうか。それは国籍を問わなかったようで、このスライドは海外クリエイターたちの目にも止まります。SNSの難しいところですが、このスライドがどのようなイベントでどのようなテーマで使われたのかを彼らは知りようがありません。
彼らの議論は次第に、BPの是非やUEの是非にまで及び「BPは必ずこうなる!」や「だからUEはダメなんだ」といった当初の講演とかけ離れた内容になってしまいます。当事者であるCAVYHOUSEさんは「そういう内容じゃないんだけどな……」という思いながらそれを眺めていたようです。
ゲームパビリオンjpでは、一人歩きしてしまった1枚のBPスライドに焦点を当て本当はどういう講演だったのかをCAVYHOUSEのお二人にお聞きしました。
――今日はよろしくお願いします。私もSNSで見かけたあのスライドですが本当はどういう講演でどういう反応だったのでしょう?
CAVYHOUSE:よろしくお願いします。あのスライドは36枚の1枚で講演の内容もプログラムについてではなくて、制作事例を紹介したものでした。UEミートアップですから、参加者もUEを使う人ばかりでスライドを見た時は笑いも起きていました。
――使っている人特有の共感のような「あるある」の空気感みたいなものなのですね。
CAVYHOUSE:そういう感じですね。実は以前にも「汚すぎるBP」として自分の開発事例をXにあげたら、反響が凄かったことがありました。ただ、あのスライドはちょっとした笑いを入れるようなつもりでした。ツッコミ待ちのような(笑)
――たしかに、使っている人なら共感の笑いが起きそうですね(笑)実際のスライドも見ましたが、個人開発(ゲームデザイン・プログラム・グラフィックを善乃さんが一人で担当)の事例の一つとして紹介していますね。
CAVYHOUSE:ちょっとしたあるあるジョークが思わぬことになったんですが、講演では過去にもUEで制作しコンソールにも出しているという背景が共有できていたが、広がってしまったポストではそういう背景が抜け落ちてしまっていました。英語の盛り上がったポストにリプライしてみたんですが、レス100番くらいではあまり見られなかったり……
500万近いインプレッションとなってしまった投稿
「やあ、私がこのスパゲティを作ったクリエイターです!」と返信をするが遅かった
――もう本人そっちのけですね(笑)
CAVYHOUSE:しかも前の講演が「こうすればスパゲッティを避けられる」という内容の講演だったので、ある意味きれいにハマったというか(笑)
――それは笑いが生まれますね。大阪のノリでは「おいしい」流れです(笑)(聞き手は大阪生まれ大阪育ち)開発には何年もかかっていると思うのですが、UE5を採用したのはどういった理由だったのでしょう?
CAVYHOUSE:開発には3年半かかっていて、開発を始めた頃にUE5がちょうど出たので使ってみようと思いました。その頃はインディーにUE5を採用することも珍しかったので話題になるかなと思ったのですが3年半経ったら他の人も使い始めていました。

――たしかに当時は先端でしたね。UE4もUE5も使ってゲームを作っているわけですがスパゲッティにならない方法はあるのでしょうか?
CAVYHOUSE:通常のソースコードと同様に、整理することに気を払っていえば可読性の高いBPにできると思います。
自分の場合は個人開発ということもあって、その辺にコストを割かなかった結果ああいうブループリントになっています。
といっても自分では把握できる程度には整理しているのですが…部屋を片付けられない人間が自分は把握しているから大丈夫と主張するようなもので、客観的にみると汚いのは理解しています。
――個人開発は、意思疎通のためのコストがかからない。言い換えると自分が解ればいいので結果として混沌とすることがあるのでしょうね。それにしてもXでは主旨から随分とかけ離れてしまった印象がありますが、その点についてはいかがでしょうか。
BPをメインに使用していてもゲームを作ったりコンソールに移植したりすることは十分に可能ですし、実際比較的移植の難易度が高いといわれるPSVR対応の作品もほぼBPのみで作っています。
また、開発者は元々コードベースのゲーム開発の経験があり、そのうえでBPを選んで使っています。
Xでの反応が文脈から離れたものになってしまったので、この記事で少しでもBPのいいところが伝えられたらうれしいです。
――ありがとうございました。
自分の講演のスライドに入れたちょっとしたことがとんでもなく大きな反響になってしまい、しかも誤った内容で広まったしまうのはある意味現代の出来事かもしれません。
今回は、そんな出来事が自分の上に降りかかってしまったCAVYHOUSEさんにお話を伺いました。今後も開発にまつわる話などを記事にしていきたいと思います。